[珊瑚の欠片ひい 0/100個]
[珊瑚の欠片ふう 7/100個]
[珊瑚の欠片みい 13/100個]
[珊瑚の欠片YO 13/100個]
[珊瑚の欠片いつ 27/100個]
[珊瑚の欠片むう 62/100個]
[珊瑚の欠片なの① 62/100個]
私はオサッスィーミーが好きだ。大大、大好きの大好物だ。
最初に生でお魚を食べようなんて阿呆なことを考えた人類の誰かに、私は感謝したいと心から思う。
だっけレェドも。中学生だった頃、私はそのオサッスィーミーのことなど全く思い出さなくなるくらい、とあるものにどっぷりハマっていた時期がある。
それは Minecarft という名のゲームだ。
直訳するなら"私の鉱山"かな? でもたぶん"私の悪だくみ"っていう意味合いのタイトルだと思う。
世界の全ての構成物が、1メートル四方のブロックでつくられた世界。
そこに大した説明も無いままに放り出されるプレイヤーは、そのブロックを壊しタァ~リ、積んダァ~リ、らじばんダァ~リしながら遊び方を覚えていく。
ブロックだけではなく、火を扱うことも出来る。
そのための火打石が作成できたら人類の夜明けだ。夜に明るさを手に入れるところから文明が始まる。
調子に乗って森林火災を起こしてしまったりもするけど、この世界に降り立ったばかりの頃は何もかも楽しい。
クリエイティブモードでないなら、その世界をじっくり探索するためにはお弁当が必要だ。
育つのに時間がかかる野菜よりも、火はもう手に入れたのだから、焼くだけですぐ食べられる野生動物を探す。
何れ人類は、動物を探し回るよりももっと賢いアイディアを思いつく。
お肉さん達を閉じ込めて繁殖させるのだ。
家畜産業の始まりである。
Minecraftは、生きることと食べることの大切さを教えてきやがるのだ。
その為か、これほど平和的なゲームなのにも拘わらず発禁となった国だってある。
どこだったかな。
バレンシアじゃなくて、トル……えーと? イスタンブ……うーん忘れた。
その畜産時代、そして農耕時代は、ほぼ同時に訪れるであろう。
水辺にしか設置できないサトウキビをより少ないスペースで育てる手段を見出していくのだ。
そしてその過程で、過ぎたる欲望の片鱗を垣間見せ始める人類。
彼らは大量に栽培した作物を
光学技術を用いて効率よく収穫する術を編み出していく。
やがて作物から光を奪って回収する手法は
ナーフされてしまったが、
それでも人は大量生産をやめない。
そんなに食べないだろう。
どうしてまた作るんだ。
野生動物は自分の腹を満たせたなら、それ以上狩り続けたりしない。
だが人類は、胃袋が満たされても決して満足しないのだ。
食べきれず余って廃棄することになろうとも、更に更に生産し続けていく。
サトウキビ畑は、今やもう塔だった。
その果てしない欲望。塔の名は……バベル。
他者の集落を身勝手に開発し始める傲慢さ。
自然への感謝などとうに忘れ、大地を削って平らにしてしまう不遜な生物。
人を拒む大渓谷すらもガラス張りにして安全化してしまった不届き者達は、
自らの居住空間とすべく、どこまでも大地を平らにしていく。
相手が海であろうと、欲望は止まらない。
人が人同士で支配したり、されたりする様になってから、
どれくらい経っただろう。
労働者側と
支配者側に
別れた人間たちは、
ミクちゃんを作り、
大量生産される食物は支配階級にある者たちだけが食い散らかし、
餓えた下級民たちは世界の奥底で石材を集めさせられていた。
貧しき者たちに堆い宮殿を建てさせ、
富める者は何もせず享楽に耽った
暗黒の時代。
人は遂に、神に弓引く忌まわしきテクノロジーを手にしてしまう。
ゴーレム。
そう呼ばれる人工の生命。
人類はゴーレムを大量に生み出し始めた。
否。
生産し始めたのだ。
巨大な施設が完成しつつあった。
だがそれは。
ただゴーレムを生み出すためだけにある工場ではない。
ゴーレムの殺処分場でもあるのだ。
その巨体が鉄で形成されているゴーレムは、人類の穢れた欲望のままに糧とされていった。
奪うための命を造る工場が、幾つも作られた。
生きていくだけなら
不必要な愚かな行いを
厭くことを知らず重ねていくだけの愚かな歴史。
或る日、
巨大な凱旋門を築かせることにも飽いた時の権力者たちは、
陽が沈んでから、
とうとう宇宙船まで作らせ、
地球の外側へ達してみたが、
それでもなお、
欲望は止まらなかった。
ネザー、そしてジ・エンドと呼ばれる2つの別次元への渇望。
底なしの空間であるジ・エンドに浮かぶ島を、
地獄という意味のネザー世界に埋め込んだ時の権力者たちは、
大量の資材という資材を搬入し
地獄の中にすら己のテリトリーを築いていった。
ゴーレムの軍団を送り込んで、ジ・エンドの原住民であるエンダーマンを滅した権力者たちは、
その死体から貴重な素材を獲得し得ることを突き止めた。
止まらぬ欲望のうねりが、
恐ろしい規模の
エンダーマン生産及び殺処分施設を造るのに、
そう時間はかからなかった。
彼らはジ・エンドを埋め込んだネザーを更に現実世界とも、
接続した。
大いなる神が創りたもうた恵みの大地に、呪われし巨大な地獄を召喚した彼らは、
効率のいい資源の搬入ラインを得ても、
まだその欲望を潰えさせはしない。
どれほどの贅を貪り尽くしても、
朝になればまた欲張り始めるのだ。
てな具合にさ。
授業もマイクラ風にやってくれたら、私の歴史の成績はもっと Good なはずなんだけどなぁー。
担任の佐々木先生が世界史の授業をしている真っ最中だけど、話長いだけで面白くないからさっぱり頭に入ってこない。要所でジョーク雑えたりしてこっちの気を引く努力とかすればいーのに。
だから私は端末でマイクラを起動して、レッドストーン回路を並べ始めるしかないのだ。
最近お気に入りのこの町に、赤石回路を使った新たなガジェットを拵えていこう。ブロックがウェーブするだけの何の役にも立たない飾りオブジェクトだ。
マイクラに熱中していると、いつの間にやら授業が終わったらしく帰りのホームルームも終わっていた。
そして。
私の席へやってきた佐々木先生が、ちょっとマイクラを貸してくれというので渋々貸してあげた。
先生は私の町に『アナル』という文字を書いた。書くといっても羊毛プレートを1枚ずつ置いていくのだ。
ふ~む『アナル』とは?
どういう意味がある言葉なんだろう。
ブロックを置いていく快感に目覚めたらしい佐々木先生は、舌をぺろぺろさせながら気持ち悪い顔で熱中し始めた。
やや不快な思いで見守っていたが、マイクラ仲間が出来るかもと思って私はちょっと嬉しかった。
しばらくすると佐々木先生は『習字みたいな大きなプレートを作ってあげるね』と言って私の町を私の端末ごと持って帰ってしまった。
下校後、家で弟たちに「アナルとは何ぞや?」と聞いてみた。
弟たちはもじもじしながら「こ、肛門のことだよ姉さん……」と答えてくれた。
凄く恥ずかしかった。許せん。私は佐々木先生のせいで、弟たちに聞いてはならんことを聞いてしまったのだ。
次の日。
憤りが抑えられない私は、不埒な佐々木先生を問い詰める気満々だった。
朝のホームルームが終わるや否や教壇へ駆け寄り、
「佐々木先生。どういうつもりで私の町にあんな意味の言葉を羊毛プレートで置いたのですか?」
と出来るだけ冷たい声を出して聞いてみると、
得意げな顔で佐々木先生は私の端末を返してくれた。
「力作だよ」
と何やら労って欲しそうに言ってくるので、また何か卑猥なワードを作って私の町を穢したのかと思い慌ててマイクラを起動してみた。
あんなに人を殴ったのは初めてかも知れない。
本当は学校の先生を殴ったりしたら駄目なんだけど、緊急職員会議で今回は佐々木先生のほうが悪いということになり、私はお咎めすらも無く停学とかにもならなかった。
佐々木先生は何処か遠い所に飛ばされていった。めでたしめでたし。
バージョンアップが繰り替えされてきたマイクラ。
多くのマイクラプレイヤーは、VUがあれば新マップで新たに始め直すみたいだ。
だっけレェドも。私は丹精込めて作ってきた町がいっぱいあるマップを捨てられなかった。
なので新しいバージョンになっても、ずっとその1つのマップで無理矢理に幾度ものVUを乗り越えてきた。
するとこんな風に不自然な景色が形成されていく。
バージョンの壁と呼ばれる絶壁。
内部データが新バージョンに更新されることで、前のデータとは違う地形パターンが広がっていくために起こる、直線の断裂。
お陰さまでごちゃごちゃになってきたmyスィートマップ。
そして広大になり過ぎた土地は、
もはや徒歩や飛行で移動するにも億劫なほどで、
とうとうコマンドによるワープを使い始め、
私はその為のステーションも各地に作成し出した――――
――――あたりで馬鹿馬鹿しくなってあまりマイクラやらなくなったんだけど。
私の中学時代の後半は、このMinecraftと共にあった。
同級生と同級生の浮かれた話に横から浮かれながらも、私自身はどっぷりクラフターとして生きていた。
親友の美絵が、何度か男子から告白されたこともある。
けれど。
あの子は親の仕事を手伝うのが忙しいのでと断っていた。
数回だけ、私も男子から告白された。
けれど。
私も Minecraft が忙しいのでと断っていた。
付き合うっていうのは他の女子たちから聞くところによると、多くの時間を取られるらしいので。
それに。
あっち側に好かれているのは嬉しいんだけど、こっち側は別に好きじゃないので。
まぁ美絵の高尚な理由に比べたら私のはアレだけど。
But......もし Minecraft にどっぷりじゃなかったら?
断らなかったケースもあったのかも。
別に好きでも何でもない、あの男子の中の誰かと付き合っていたのかも。
たぶんそうだ。
付き合ってたら Together してる中で、好きになっていけるのかも知れないんだし。
……全ては想像の域を出ないまま。
男子と手すら繋いだ経験が無いまま。
盛り上がれるのは他人の恋愛話だけっていう私のまま。
青春を送るべきなのかも知れなかった中学生活は、仮想世界の建築士として終わってしまった。
高校へ入学。
私は再びMinecraftをしていた。教室で授業中だがそれどころではない。
少し飽きかけていたこのゲームに、再び熱中し始めた理由。それは、さっきの昼休み時間にライトニーから超絶的な裏技を教えてもらったからだ。
『建物やそのパーツを座標ごとコピーして、別の場所にペースト出来るんだ』
こないだ彼女に私のマップデータをあげたのだけど、その中にあるタージ・マハルという建物をあっという間にコピペして増やしてみせてくれた。
私は彼女の端末を食い入る様にみつ
あ、そうだ。
ライトニーっていうのはこの春からのクラスメイトで、高校生活最初に出来た新しい友だちだ。
最近は私や美絵と一緒に三人で遊ぶことが多い。
彼女は中学生の時にダークナイト職の資格を取得した、体育会系優等生ちゃんだ。
されドォ~モ、私に負けず劣らずのマインクラフターでもある。
コピペ技に大興奮した私は、いそいそと自分の端末から起動した Minecraft をライトニーに見せながらやり方を教えてもらった。
忍術については覚えが悪かった私だけど、好きなものなら話は別。
彼女のマイクラ知識を渇いたスポンジが如く吸収し尽くしたカワイターノこと私は、さっそくそのコピペ技で高い塔を建て始めた。
素晴らしい。一つの区画だけ造ってしまえば、あとはそれを丸ごと積み上げられちゃうんだ。
限界高度近くまでコピペ塔が出来上がったら、今度はそれを更に丸ごとコピペして四本に増やしてみた。
おお、いいね。私が作り始めていた海の上の別荘に、凄く日当たりを奪いそうな四連塔が完成した。あっという間じゃなイカ。
ここで6時間目の授業が始まったけど、すっかりマイクラ熱が復活してしまった私はそのまま塔をデコり始めた。
ライトニーは正確には『ライ・トニー』っていう名前で、後ろのトニーっていうほうが苗字じゃなくて名前らしい。
でもトニーってなんだか男みたいだから、雷っていう意味らしいライっていう苗字も一緒にして『ライトニー』って呼ばれてる。
彼女はいつも宝塚みたいな感じで男っぽい喋り方をするけど、くすぐってやると凄く可愛い声を出す。
ライトニーってダークナイト職の資格を活かして放課後に結構稼いでるらしくて、高校生の身でありながらなんとカルフェオン市内に一軒家を所有している。
その家で妹さんと、妹さんの旦那さんと一緒に三人暮らしをしてるのだ。
妹さんはまだ中学生。な、なのに結婚してるのか!? ずいぶんと生き急いでしまったものだなぁ。
ご両親はとても遠くの土地に住んでいて、結婚の挨拶をするのも往復で一週間以上かかるとこみたい。
いやぁ~。
中学生での結婚なんて、親も姉であるライトニーもよく認めたなぁって思って聞いてみたら、
『まぁ……パルスのファルシのルシがパージでコクーンだからな』
と何やら意味不明なワードが返ってきた。
きっと私の様なコドモにはまだ分からないオハナシなのだろう。
あ、下校時間。
今日は美絵と一緒にライトニーの家へ行って、三人でお泊り会の予定だ。
なんでもその妹夫婦がふたりで旅行へ行ったらしく、今夜は好き勝手できるから来いとのこと。
「下着のままうろついても大丈夫だ。なんなら真っ裸でも構わないが」
そんな台詞を真顔で言うライトニーに美絵とふたりで笑いながら、カルフェオンの市内を横切って彼女の一軒家に向かった。
その晩下着で燥ぐのにも飽きた頃に、まさか美絵から『メンノ君に告白する』なんて台詞を聞こうとは――――
教室で Minecraft やってた時には全く思いもしなかった。
つづく
[珊瑚の欠片ひい 0/100個]
[珊瑚の欠片ふう 7/100個]
[珊瑚の欠片みい 13/100個]
[珊瑚の欠片YO 13/100個]
[珊瑚の欠片いつ 27/100個]
[珊瑚の欠片むう 62/100個]
[珊瑚の欠片なの① 62/100個]
[珊瑚の欠片なの② 62/100個]☜イマココ
[珊瑚の欠片番外編 佐々木先生(1巻)~]
[珊瑚の欠片なの③ 62/100個]
[珊瑚の欠片なの④ 62/100個] R18 ※遂行中
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