2018年2月26日月曜日

珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(6巻)最終巻




[珊瑚の欠片 目次ページ]


出勤時間だな。さあ行くか。今日はボキュの人生最良の日となるのだ!


大事な日なのに徹夜してしまったが、睡眠不足など微塵も感じない。ボキュは今、カワイターノちゃんへの愛で情熱とかが溢れ返っているからだ。


そうだ。仕上げにボキュの自撮りを彼女の端末に残しといてあげよう。
これはもうアレだな。彼女の毎晩のオカズになってしまうこと間違いなしだな。


ふぅ……教室に到着。職員室からの道のりが、いつもより短く感じた。
今日から愛とスリルに満ちた生活が始まるのだ。自分でも知らぬ内に、少し後戻りしたい気持ちなのだろうか。


どの休み時間であの乳房を見せてあげようかなと朝のホームルーム中は気が気じゃなかった。カワイターノちゃんの方を見られん。

こういう最終確認っていうのは、タイミングこそ重要な性交へのイヤ成功への大きなポイントで何だろ、アレなのだ。ああ、混乱気味だ。考えがまとまらない。

キミの可愛らしい乳房のてっぺんをポイントするのだ今夜。それを思うと矢も盾もたまらず気が気じゃない。あーぺろぺろ。


お、おおお? そう思っていたらホームルームが終わるや否やカワイターノちゃんのほうから教壇へ向かってくるじゃないか。乳房がイヤ彼女がどんどん近づいてくるじゃないか。

「佐々木先生。どういうつもりで私の町にあんな意味の言葉を羊毛プレートで置いたのですか?」

そんな恥ずかしい台詞をそんな真顔で。
教室内に残る少なくない生徒たちが、ボキュたちを少し注目してるよ。


だけど彼女はそんな些細なこと気にならないみたいだ。じっとボキュを見つめて返事を待っている。かんわいい。ああ、かんわいいお顔だ。

どう答えて欲しいんだろうなぁ。

彼女の頭の中は今、大人の世界へのの興味でいっぱいなのだろう。
『佐々木先生、次はどんな意味の言葉をくれるのですか?』
そんな具合に昨日から今日の今までワクワクドキドキしっぱなしだったのだ。


ああ、しまったな。

『乳房』じゃなくてもっと強烈な単語のほうが良かったかも知れない。羊毛プレートで置いたのって『アナル』だったよな。乳房だとエロワードとしてアナルよりも若干弱いじゃないか。裏の『ポルチオ』は表に書くべきだったかもなぁ。
カワイターノちゃんからここまで期待されてるとは、うぬぼれ屋のボキュでも流石に予想してなかった。

まあ仕方ない。

一晩中頑張った成果を労って欲しいし、せっかくこうして彼女のほうから来てくれたのだ。見せるなら今しかない。


ボキュは静かにカワイターノちゃんの手に端末を返してから、
「力作だよ」
と自分に出来る最大限の爽やかさを醸した。きっとこういうさりげなぁ~い大人の魅力にも、彼女みたいな若い子は惹きつけられちゃうんだろうな。


するとどうだろう! 彼女はもう待ち切れないといわんばかりにマイクラを立ち上げ始めたじゃないか!

ああ……キミはそんなにボキュのことを。

これはもう完璧にいけるパターンだな。ここまでの手応えを感じたのは、ボキュの人生でも初めてのことだ。今夜はいっぱいキミのあれそれ感情を開放してあげるからね。たっぷり解放してあげるからね。お互いにたっぷりどっぷりしっぽりしようじゃないか。


さあ、言ってくれカワイターノちゃん。まあ、佐々木先生。この絶壁乳房は私のことなのね? 嬉しい! ありがとう佐々木先生大好き愛してるって、みんなの前だけどさあ言っておくれ。遠慮なく言っておくれ。言うんだ。さあさあカワイターノちゃん。早く、あ、いやもう呼び捨てがいいかな? カワイターノ。ほら、いいんだよ。ボキュの胸の中に飛び込んでおいでカワイターノ。さあほらカワイターノ!


キミのその気持ちはね、片想いじゃないんだよ。
ボキュのほうも、キミのことが


後頭部がしたたか黒板に打ちつけられた。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、どうやらボキュはカワイターノちゃんに殴られた様だ。
い、いったいどうして?
彼女は怒りの形相で、更にもう一発ボキュの鼻っ面を殴りつけてきた。

ボコボコボコボコ。

ちょ、ちょっと。どんだけ殴れば気が済むの? しちゅこい。しちゅこいよ。
はッ……そうだった。キミはしちゅこい性格だったもんね。そうだったそうだった。ボキュは受け止めるって誓ったんだ。
でも、なんかこれは違う。

あ、そうか。これきっと夢だ。てっきり徹夜したんだと思ってたけどボキュは寝ちゃったんだな。ほっぺたつねってみよう。


あ、痛い! 夢じゃない! ボキュは本当に殴られている。ああぁぁあぁぁ。や、やめ、て。痛いよう。痛いからやめてよう。

懇願虚しく、ぐちゃぐちゃになるまでボキュは殴り続けられた。
どうしてなのか分からない。いったい何が気に入らなくて怒ってるのかさっぱり分からない。分からないが、とにかく怒っているのだけは確かだ。どうしてなんだ。カワイターノちゃん、どうしてそんなに怒っているんだい? 生理かい?

あ、あれ? 背中に何やら柔らかな感触が当たってきた。それは、ふたつのささやかな膨らみである。


あ、あッ! こんな時に、どうしてボキュは背中に乳房を押し付けられてるんだ?
訳が分からない。なんで? カワイターノちゃん何故そんなに強く乳房を押し付けてくるの?
ボキュのことを怒ってるのか好きなのか、ぜんぜん解らないよ。理解不能だよ。

と思っていたら視界が逆さまになった。
次いで教室の景色がグルグルと回転し始める。

…………ッあが!!

こ、これはッ。クノイチ職の戦闘スキル。

ゐずなおとし!!!!


螺旋を描いて叩きつけられたボキュ。ズドーンと教卓と教壇を砕いて脳天は教室の床、をも砕いてそのまま真下の職員室の床まで行ってズゴーンと突き刺さった。


これによってボキュのヒットポイントがゼロになったので、慌てて校門のホームポイントから職員室に戻った。すると、ボキュの処遇を決定する緊急職員会議が行われていた。


ど、どうして? どうしてボキュをトレント村の工業高校へ飛ばす話をしてるの?
なんだか記憶が幾つか吹き飛んだみたいで、話がよく分からない。エリアンの涙つかったから経験値のロストは無いはずなんだけど。
あれ……なんでボキュのスーツはこんなにボロボロなんだ? ていうかなんでボキュ今死んだんだろ? いったいぜんたいナニが起こったの?




あれから、何年経ったかな。


色んな学校を転々として、その度に不祥事を起こしてきてしまったボキュは、教員免許をとうとう剥奪されてしまった。
今は粘土ブロック工房という会社で、アルバイト労働者をしている。


ハイデル支社からアレハンドロ農場へ走っていって食用蜂蜜を回収し走って戻って支社の倉庫に積み上げてからまたアレハンドロ農場へ。
それを何十セットもやるのが、今のボキュに課せられた1日のノルマだ。

支給された作業服はもうボロボロ。
綺麗なスーツを着て学校の先生やってた時期が懐かしい。
ああ、懐かしきカルフェオンでのいい暮らし。


都会より朝陽が美しいこと以外は何もメリット無し。ハイデルは四方を山に囲まれたド田舎都市だ。カルフェオンと違ってコンビニのひとつもありゃしない。

この粘土ブロック工房ハイデル支社には今、でっかいジャイアント職の社員の人が休暇でやってきてるから姿を見る度に怖い。サボってたら殴り潰されそうな気がして怖い。ボキュは何故か分からないが殴られ恐怖症なのだ。


でも、のんびりと鍛冶屋のオルネラさんと昼間っからお茶とかしてるあの巨人を見るたびに、足腰に余計な疲労が溜まるんだ。
休暇ならもっと静かな誰も居ない所で過ごせよ!

だが、それはどうでもいい。
そう、どうでもいいんだ。
ボキュは今も実は、そんなに嫌な生活じゃなかったりする。

2年前の春、なんとあのカワイターノちゃんが粘土ブロック工房に就職したのだ!
まあ、ボキュと違って正社員としてだけど。


いちだんと綺麗になってた彼女の最初の勤務地は、なんとなんとこのハイデル支社だった。
んワオーオ! これぞ運命! んワアーオ!
でも、ボキュの顔を見た途端、あの子はオルビア支社へ転勤してしまった。

なんでだろう?

あ、そうか。こんな見窄らしい作業服を着てるボキュに失望したんだ。
そうだよな、彼女は正社員様だもんな。


ボキュはそれから頑張った。労働者としてランクアップして、少しでも彼女に近づける様に。

何度も何度も昇級試験を受けて、落ちたり受かったりして、熟練、専門と資格を取得していった。
もう教育大を受けた時の受験生みたいな立派な御身分ではない。普段の仕事量はそのままにこなさなきゃ食っていけない。勉強と仕事を両立させていかねば、明日の朝陽は拝めないんだ社会人だから。


でも負けなかった。
ボキュの胸の中には、カワイターノちゃんへの熱い想いが燃えているんだ。
ボキュの背中には、記憶が曖昧だけどカワイターノちゃんの乳房が押し付けられたっぽい感覚が残っているんだ。

そのふたつがボキュの決して折れぬ支えとなっていた。
振り向かせてみせる、あの美しい少女を!

いよいよ最後の職人労働者試験に挑んだボキュ。
試験を受けられるのは3回まで。
しかし、与えられたチャンスは全て、不合格という結果になった……。



今、ボキュの送別会が行われている。


明日から、

専門労働者止まりの奴でもいいよって言ってくれてる会社に

移るのだ……。

送別会に社の人で来てくれたのは、ずっと賄い飯作ってくれるおっさんだとしか思ってなかったハイデル支社の支社長と、


ボキュの茶飲み友達のマルテリさんと、


少し遅れて駆けつけてくれたあのジャイ社員だけだった。まだ休暇中らしい。いつになったら働くんだ。


カワイターノちゃんは来てくれるかな。
ボキュの送別会に、彼女は来てくれるのかな。
あ、休暇中の巨体がデカい声で言ってるの聴こえちゃった。
カワイターノちゃんは来ないらしい……。

うう、ううううう。

い、いやだ。

このビールを飲んだら、ボキュは見送られてしまうんだろう!?
飲みたくない!!
精神が錯乱したフリしよう!!!
絶対この先も粘ブロ工房に居座ってやる!!!!

「処理中に内部エラーが発生しました」


「ど、どうしたんだ佐々木君? さあ、ビールを飲みたまえ」
「処理中に内部エラーが発生しましたエヘヘ」
「さ、佐々木君? お、おい」
「処理中にエヘヘ」
「佐々木くぅぅーん!?」

カワイターノちゃんとお付き合いするまで、ボキュは諦めない!
どこまでもサルの様にくらいついてやるぞ!



ボキュを振り切ることは決してできやしないんだ!



おわり


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[珊瑚の欠片なの② 62/100個]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(1巻)]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(2巻)]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(3巻)]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(4巻)]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(5巻)]
[珊瑚の欠片なの番外編 佐々木先生(6巻)最終巻]☜イマココ

いや、つづく!

[珊瑚の欠片なの③ 62/100個]
[珊瑚の欠片なの④ 62/100個R18 ※遂行中

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佐々木先生の画像として使わせてもらってるのは、
Max_Ezakiさんというフリー素材写真のモデルの方です。

ご本人様のツイッター。
[Max_Ezaki(本名です)@Max_Ezaki]

[フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)]

[モデル Max Ezaki]


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